熱海・初川沿いの喫茶店「珈琲しょっぷ たむら」(熱海市清水町)が5月24日、オープン45周年を迎える。
現店主を務める田村節子さんの夫・田村耕一さんが1976(昭和51)年に開業した同店。節子さんは「夫は熱海の旧静観荘のクラブでマネジャーをしていたが、仕事が忙しく帰宅するのはいつも夜中だった。子煩悩で、子どもとの時間を作りたいという思いもあり、夜の仕事を辞めて喫茶店を出店した」と振り返る。
節子さんは東京出身。実家は京橋で帽子店を経営し、宮内庁にも商品を卸していたという。疎開で湯河原町に来たことをきっかけに、現在まで熱海で喫茶店を続けている。創業当時、店は忙しく、8時から22時まで営業し、従業員を雇っていた時期もあったという。耕一さんが58歳で他界してからは、節子さんが店を切り盛りしてきた。耕一さんは常に蝶ネクタイを着けて店に立っていた。「夫の当時の写真を今でも飾って、見守ってもらっている」と節子さん。
耕一さんのこだわりは今でも大切に引き継いでいる。「居心地の良い場所にしたい」と、匂いが付く油を使うフードメニューは作らず、サンドイッチを中心にしたメニューに絞っているという。コーヒー豆は、創業から現在に至るまで、老舗のスズアコーヒー(神奈川県小田原市)から仕入れる。使っているミールやサイホンも、45年間大切に使い続けている。店内につるしたランプも、当時と変わらない輝きを提供している。店の看板メニューは、ブレンドコーヒー(500円)、サンドイッチ(卵、ハム、野菜=各700円)など。
店内には、節子さんの長男で、歌舞伎俳優として活躍する市川猿四郎さんのポスターや写真も飾られている。「子どものころは体が弱く、日本舞踊を習わせたのがきっかけだった」という。現在、店は節子さんと共に、鮮魚卸業を営む次男の勇人さんも店頭に立ち、一緒に切り盛りする。
現在83歳の節子さんは「昔からの常連客に支えられている。明日何があってもおかしくない年齢になってきたので、ここに居られることに感謝。その時その時を大切にしていきたい。息子が店にいてくれて本当に助かっている」と話す。店内には、高齢の客に加え、比較的若い客層の姿もある。勇人さんは「常連客にとっては、ここが母の家のような存在。常連客やこのレトロさを大切に残しながら、新しいお客さまも増やしていきたい。50周年に向けて、いろいろな取り組みをしていければ」と意気込む。
営業時間は10時~15時。毎月11日・21日・30日定休。