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熱海の総合防災会社社長が伊豆山の土石流災害を受け「防災へ思い」語る

熱海の総合防災会社「ウェックス」の渡辺淳司社長

熱海の総合防災会社「ウェックス」の渡辺淳司社長

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 熱海の総合防災会社「ウェックス」(熱海市網代)社長の渡辺淳司さんが7月6日、「熱海市伊豆山 大規模土砂災害をうけて」と題したブログを更新し、防災に対する思いを語った。

ウェックスは消防団協力事業所として認定されている

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 消防設備点検、設計、工事を手掛ける同社。渡辺さんは2019年9月に家業である「ワタナベ電気防災」を継いで社長に就任し、社名を「ウェックス 」に変更した。防災管理業務のIT化にも着手し、これまで台帳で保管していた防火管理に関する書類をウェブ上で一元管理するシステムを開発するなど業務改善を積極的に進めている。

 渡辺さんがブログを更新したのは、伊豆山の土石流災害発生3日後の7月6日。冒頭で「2021年7月3日が一生涯忘れられない日になるとは思ってもいませんでした」と書き始めたブログで、地域防災に取り組む思いをつづった。

 土石流が発生した日、渡辺さんは社員とともに国道135号を使い、逢初橋を通って湯河原町に防災設備の点検に向かっていたという。渡辺さんは「大雨によりお客さまの施設の防災設備が故障したため点検に向かったが、社員の安全を考えれば違う選択肢があったかもしれない」と振り返る。「直接の被害は逃れたが、道路は土石流によって寸断され、点検を終えて網代に戻ろうにも戻ることができない状況に陥った。通常であれば20分程度で帰ることができる道のりを、迂回と渋滞で7時間かけてようやく帰宅できた」と話す。

 渡辺さんは今回の災害を目の当たりにし、「改めてハード、つまり設備の部分だけでは対抗できないことを実感した。元々、設備だけでなく防火責任者への消防訓練のソフト面も含めたアドバイスなどを行い、火災の防止や拡大の抑制をするスタンスは持っていた。実際に、年々火災の件数は減っている。しかし今回のような土砂災害はテリトリー外だった」と話す。

 同社の業務は一般的には「消防設備業」と表現するが、同社はあえて「総合防災業」と名乗っているという。「設備だけで人を幸せにはできないとの思いから」と渡辺さん。「今回の災害がその思いをさらに強いものにした」とも。同社は観光地・熱海のホテル、旅館、テナントビルなど、数百棟の建物の消防設備を管理する。「現在、商店街で各店舗や旅館がそれぞれで行っている防災訓練を、地域をあげて取り組むことも一案」と渡辺さん。今回のような土砂災害に加え、今後発生が予想される大地震や津波による被害を極限まで減らすために、防火管理者が災害対策を共有したり議論したりするようなコミュニティーを作る計画も考えているという。

 渡辺さんは今後について、「私たちが自然災害に関する知識を持つことも必要だが、しっかり知見を持っている専門家の皆さんの力を借りたい。その情報を集約して、地域のために形にしていくハブのような存在に当社がなれれば」と話す。「熱海が全国一、防災対策をしている街にしていきたい」と意気込む。

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