熱海の環境まちづくり会社「未来創造部」(熱海市渚町)がこのほど、「熱海ブルーカーボンプロジェクト」を始めた。
「未来の子どもたちに、きれいで楽しい地球を残す」というミッションを掲げる同社。熱海を拠点に、海洋プラスチックゴミの回収プロジェクトや環境問題を考えるセミナー、家庭ゴミを削減するフリーマーケットなどを手掛ける。
今回の「熱海ブルーカーボンプロジェクト」は、同社が推進する「ブルーエコノミー・プロジェクト」の一環。「ブルーエコノミー・プロジェクト」は、藻場の再生による漁業支援や新たな観光資源づくり、海藻によるマイクロプラスチック除去の実験、収穫した海藻の炭化・ガスエネルギー化など、環境問題を解決するための一つの社会実験プロジェクトを指す。
プロジェクトの第1弾として、同社は「コアマモ」という海草の再生によるブルーカーボンプロジェクトをスタートした。ブルーカーボンは、海藻や海草など海洋生物によって吸収された二酸化炭素由来の炭素で、陸域生物により吸収される「グリーンカーボン」と並んで注目を集める。温室効果ガス増加の緩和に効果が期待されるが、近年、ブルーカーボン生態系が急速に消失していると言われている。
同社の光村智弘副社長は「海藻や海草が茂る『藻場』が減少しているのは、一般的には温暖化による水温上昇、川からの農薬、食害などが原因と言われている。元々は熱海のサンビーチ周辺にも藻場があった。水産試験場、漁協、行政、企業などと連携し、熱海で藻場を再生していく取り組みをスタートした」と説明する。
同社は、昨年から始めた藻場再生に関する調査や聞き取りの中で、土肥海水浴場(伊豆市)でコアマモの除去作業があることを聞き、熱海への移植を模索。行政や漁協などに申請・許可を取り、今年6月に衣装ケース15箱分のコアマモを土肥から熱海の海域に移植した。光村さんは「コアマモなどの海草は、海水浴をするには邪魔になるため除去されるが、ブルーカーボンや漁場の視点では大切な資源となる」と話す。現在は、水深6メートルほどの熱海周辺海域で、食害を防ぐ仕掛けをして成長の経過を観察しているという。
今後は「カジメ」や「ホンダワラ」という海藻の藻場の再生にも取り組む。同社の枝廣淳子社長は「以前は熱海にもカジメなどが生育していた。漁場としても、二酸化炭素の吸収による温暖化対策としても大事。カジメはマイクロプラスチックを吸着するとも言われている。秋はカジメなどの種を持った海藻が海岸に漂着するので、それを植え替えていく予定」と話す。
枝廣さんは「プロジェクトには熱海市民や子どもたちにも参加してもらい、環境教育につながれば。他の地域にも広がり、日本全国の活動にしていきたい」と期待を込める。