緊急事態宣言が発出された熱海市内では8月20日以降、休業や時短営業をしながらも、テークアウトに活路を見出す飲食店も少なくない。
観光地・熱海は、7月3日の伊豆山土石流災害の発生により、主要道路が不通になった影響などで宿泊を取りやめる観光客が急増。7月だけでも約2万人が市内の宿泊施設の予約をキャンセルし、約5万6千人が同市への訪問を取りやめた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、8月20日には静岡県が緊急事態宣言の対象となり、書き入れ時の夏に大きな打撃となっている。
熱海市内の多くの飲食店が休業や時短営業を行う中で、テークアウト営業のみを続ける老舗飲食店もある。
1947(昭和22)年創業の洋食店「宝亭」(熱海市銀座町)は、静岡県にまん延防止重点措置が出たときに、テークアウトのみの営業に切り替えた。現在も店内での食事提供は行わず、テークアウトのみ対応する。コロナ前から弁当の販売を行っていたが、コロナ禍になってテークアウト用のメニュー冊子も作り、テークアウトにも力を入れるようになったという。同店の定番メニューは、創業から観光客や地元民に愛されるカレーライス。テークアウトは、カレーライス(850円)やカツカレー(1,050円)のほか、ハヤシライス(1,050円)、カツサンド(1,000円)、カツ丼(950円)などで、テークアウトは店内で提供していた多くのメニューに対応する。2代目店主の長島一俊さんは「通常営業したい気持ちはあるが、お客さまの安全や店の信用を考えて休業している。1日でも早く復興して活気のある以前の熱海に戻りたい」と話す。「営業していると思って来店するお客さまもいる。海岸で食べるからと、テークアウトに応じてくれるお客さまいて、非常にうれしい」と、感謝を込めて現在「カツサンド2ピース」のサービスを行っているという。
1963(昭和38)年にすし店で創業した熱海駅前平和通り商店街のうなぎ店「うな正」(田原本町)も、休業しながらテークアウトのみ営業を続ける。商店街にある土産物店の多くは営業を続けるが、休業の貼り紙を出す飲食店も少なくない。同店では以前からテークアウトにも対応しており、同店オリジナルのテークアウト用紙バッグも用意する。店主の久保田昌之さんは「商店街の人出はコロナなどの影響で左右されている。当店は以前から持ち帰りにも対応してきているが、コロナ禍前と比べるとテークアウトは3倍くらいに増えている」と話す。同店は、鹿児島県産、宮崎県産、静岡県産、愛知県産のうなぎを中心に、「その時々で最も良質なうなぎを仕入れている」と言い、地元の人が電話注文して購入していく姿が見られる。うなぎ弁当は並が3,500円、上が5,000円。久保田さんは「今は通常営業は我慢してテークアウトでおいしいうなぎを届けたい」と前を向く。