熱海・伊豆山の土石流災害で損傷した逢初地蔵堂(熱海市伊豆山)の復旧作業がこのほど完了し、活動を進めてきたメンバーと地域住民が7月9日、仕上げ作業と逢初地蔵尊の運び込みを行った。
復旧作業に当たってきたのは、森林保全に取り組むNPO法人「熱海キコリーズ」(昭和町)とまちづくり活動を行うNPO法人「atamista」(銀座町)を中心とした修復プロジェクトメンバー。熱海キコリーズのメンバーである太田大翔さんら睦月建築工芸(神奈川県逗子市)も協力した。
伊豆山の浜地区にある地蔵堂には逢初地蔵尊が納められ、地域住民のよりどころとされてきた。昨年7月の土石流で地蔵堂が大きく損傷を受けたが、地蔵尊は泥に覆われた中でほぼ無傷で発見された。
地域からの声を受け、昨年9月に地蔵堂修復プロジェクトを立ち上げて復旧作業に取り組んできた。地蔵堂は警戒区域内にあるため特別な許可を得て、安全を最優先して作業に当たったという。熱海キコリーズのメンバー・渡辺昌宏さんは「安全第一で、法令を守りながら慎重に作業した」と話す。熱海出身で現在は米軍基地の消防隊員として働く渡辺さんは、仕事が休みの日を使い、高所作業などで経験を生かした。
9日は、朝から2時間ほどかけて、近くの浜会館に保管していた地蔵尊や装飾品を完成した地蔵堂に移動。地元の女性らと一緒に掃除し、きれいになった地蔵堂に地蔵尊2体を迎え入れた。地蔵堂の床には、伊豆山に植わるヒノキの間伐材を使った。毎月地蔵堂で法要を続けてきた地元の女性は「土石流後も浜会館で法要を行ってきたが、ここでまたできることをうれしく思う。お地蔵さんもみんなに感謝している」と笑顔で話した。
熱海キコリーズ代表の能勢友歌さんは「自分たちが作業を始める前に、復旧のボランティアの人たちが地蔵堂の中の泥出しをしてくれた。たくさんの人の支援で修復することができた。地蔵堂をまた使ってもらえる状態にたどり着けてよかった。地域の人たちが集まる場所になれば」と期待を込める。渡辺さんは「感無量。地域の人に感謝の言葉をかけてもらえ、みんなの笑顔が見られてよかった」と話していた。