熱海の老舗温泉宿「山木旅館」(熱海市中央町)が5月、客室14室を改装してリニューアルオープンした。
1928(昭和3)年に創業した同館。1950(昭和25)年に発生した熱海大火で建物の一部を焼失したが、現在でも創業当時の日本建築を残す。今回のリニューアルは昨年9月に着工し、客室や共有スペースを中心に改装。全15室のうち14室を4月までに順次改装して宿泊客を受け入れた。
リニューアルの経緯について、5代目の鈴木吉司さんは「お客さまのニーズの変化を感じる。当館は部屋食にこだわってきたが、コロナ禍を経験してなおさら部屋食が求められている。和風旅館の良さを生かしながら、滞在スタイルの変化に対応したかった」と話す。
リニューアルは、客室の壁や畳などを和モダンのしつらえに変えたほか、客室の洗面台の新設や浴槽をシャワー室に改装するなどした。「女性客が増えているので、水回りは特にこだわった。天井の梁(はり)など、和風の良さを残せるものは残しながら、カジュアルな気持ちで使ってもらえるようなイメージを大切にした」と鈴木さん。残り1室の客室も現在改装中で、半露天風呂を備えた客室として5月下旬の完成を予定する。
このほか、プロジェクター設備を備えた会議室も新たに設ける。鈴木さんは「コロナ禍で企業のワーケーション利用が増え、会議室への要望や問い合わせが多かった。10~20人程度の会議や食事会にも対応できる」と話す。7月からロビーやフロントなど、共有スペースの改装も予定しているという。
ハード面だけでなく、サービスも時代の変化に対応しようと、30代の若い料理人も新たに採用したという。鈴木さんは「より多くのお客さまに気軽に利用してもらうことで、日本の旅館の良さや文化を知ってもらえれば。創業100年に向けて旅館文化を紡いでいきたい」と話す。