料理人の五十嵐美幸さんが監修する「熱海美虎(みゆ)本店」(熱海市中央町)が7月27日、熱海市役所前にオープンした。
同店は、4月にJR熱海駅近くに開業したラーメンとシューマイの専門店「熱海美虎」(田原本町)に次ぐ五十嵐美幸さん監修の熱海2号店。田原本町の店はラーメンとシューマイに特化したメニューを提供しているが、本店では16席のイートインスペースを設置し、中華料理のメニューも充実させる。セントラルキッチンを設け、イートインだけでなくテークアウト、通販、新商品開発のためのラボとしての機能も備えるという。
メニューのコンセプトは「出汁(だし)中華」。日本のだし文化と中華料理の技法を組み合わせ、「新しいけど、懐かしい、優しいけど、力強いうま味を感じる出汁中華を、熱海から発信したい」という。
ランチメニューは、魚のだしを使った「担々麺 魚出汁」(1,100円)、熱海で水揚げされた鮮魚と菜飯を合わせた中華風海鮮丼「海鮮菜飯(カイセンサイファン)」(1,650円)、油揚げを皮に使った「シュウマイ定食」(1,100円)、大粒のハマグリのだしで作った「ハマグリ麺」(1,870円)など。ランチには前菜とデザートが付く。
ディナーメニューは、麺類やご飯物に加え、朝に水揚げされた鮮魚にぐり茶で作る醤(ジャン)をかけた「カルパッチョ お茶ジャン」(1,100円)、静岡ミカンの陳皮(チンピ)で香り付けした「海老のチリソース」(1,650円)、サザエが2個ほど入った「サザエ春巻き」(1,100円)、カツオ節を衣にまとった「元祖かつお節唐揚げ」(660円)など一品料理をそろえる。メニューのいくつかは、テークアウトにも対応する。
五十嵐さんは「当初予定していたメニューから、だいぶ変更した」と言う。「熱海駅前に出店して気付いたことは、熱海は東京よりも、味の濃さや辛さではなく、食材自体の力強さや優しさ、うま味を求めているということ。静岡には誇れる食材がたくさんある。地元の野菜や魚、肉などを使い、静岡や熱海の名産品のおいしさを伝えていきたい」と話す。
五十嵐さんの夫・佐々木順一さんは熱海出身。2015(平成27)年、多賀に2カ月限定の「夏美虎食堂」をオープンした経緯もある。五十嵐さんは「2号店の準備をしている最中に、伊豆山の土石流が発生した。お世話になってきた熱海に何ができるかと考えて、シューマイによる支援をスタートした」と話す。伊豆山の土石流災害を受け、シューマイ1個につき10円を熱海市に寄付する取り組みを始めた。五十嵐さんがSNSで発信すると、ネットショップには全国から多くの注文が入り、一日1600個もの注文が入った日もあるという。「熱海駅前の店は一旦休業し、スタッフ総動員で朝までシューマイを作り続けた」と振り返る。
五十嵐さんは「熱海に対する思いがより強くなり、地元の魅力的な食材をさらに広げていきたい」と意欲を見せる。熱海の宇田水産(桜町)と協業し、フードロス問題への取り組みとして未利用魚を使った加工品の商品開発と販売を行っていく構想もある。五十嵐さんは「地元の事業者と共に、相乗効果が出るように、熱海の食材の素晴らしさを伝えていければ」と意気込む。
営業時間は11時~21時(イートインのみ15時~17時は休業)。火曜定休。