熱海で干物の製造と小売を手掛ける「あをきのひもの本店」(熱海市銀座町)がこのほど、おつまみシリーズ「スナック熱海」の販売を始めた。来年春に本店をリニューアルし、新規事業にも着手する。
同社の創業は1886年で、ルーツは米問屋。魚介類の行商を手始めに時代や客の要望を受けながら業態や商品を変え、現在は熱海銀座商店街の本店のほか、JR熱海駅の商業ビル「ラスカ熱海」(田原本町)、日本橋高島屋(東京都中央区)に店舗を構える。
今回、新たに販売を始めたおつまみ「スナック熱海」は全9種類(各540円)で、ラスカ熱海店のみで取り扱う。ラインアップは、「焼きエイヒレ」や「キスのほぐし焼き」「殿様するめ」など。昭和レトロ感を追求し、架空のスナック店をモチーフにしたデザインをあしらうパッケージで提供する。パッケージには、「恵」「メリンダ」「逃避行」など架空のスナックの店名が並ぶ。
同社の5代目で専務の青木繁明さんは「干物にとらわれない新しい発想の商品を作りたいと思い、開発した。熱海の渚町などは昔からスナック街として有名だった。熱海のスナック文化を発信することで、若い人がナイトカルチャーに興味を持ち、街に出るきっかけになればと考えた」と開発の経緯を説明する。
パッケージのデザインは、市内のデザイン会社「混流温泉」(渚町)に依頼し、「熱海らしい世界観や『エモい』と思われるデザインを大切にした」と青木さん。販売を始めると、パッケージのデザインに引かれて立ち止まる客もいるという。
青木さんは「観光客が、宿泊するホテルや帰りの新幹線でおつまみなどにするために購入してくれる。軽くて日持ちするので土産物にも最適。パッケージのデザインで『ジャケ買い』してもらっているような感覚があるので、今後はレパートリーを増やすことも検討している」と話す。
これまでも同社は、焼かずに食べられる干物「レンジでチン!」シリーズなど目新しい商品の開発にもチャレンジしてきた。2022年春には本店のリニューアルを計画し、店舗ブランディングディレクターを社外から募集する。募集には、複業支援サービス「CIRCULATION LIFE(サーキュレーションライフ)」を使う。
青木さんは「自分の中にはいくつかのアイデアがあるが、凝り固まった考えに頼らず自由な発想で形にしていくことが大切」と力を込める。今後について、青木さんは「創業からこれまでがそうだったように、干物屋という枠に縛られず、時代の流れを見ながらも時代に流されない挑戦をしていきたい」と意欲を見せる。