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【熱海でワーケーション vol.2】 まさに“泊まる美術館”「キュレーションホテル桃山雅苑」

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 熱海が現在、特に力を入れているのが「ワーケーション」です。聞き慣れた言葉になってきましたが、ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語。コロナ禍を挟んでも、この数年は順調に発展を続ける観光地としての熱海が、なぜ今、ワーケーションに力を入れているのでしょうか? 数回に分けて、熱海でのワーケーションの動きやワーケーション施設を紹介していきます。

 前回は、熱海における行政や民間のワーケーションに関わる直近の動向を伝えました。今回は、熱海のワーケーションに適した施設の中でも特徴的な施設の一つ、「キュレーションホテル桃山雅苑(ももやまがえん)」を紹介します。

前回の記事

【熱海でワーケーション vol.1】熱海が目指す“新しい滞在”の形

「キュレーションホテル桃山雅苑」のコンセプト

 宿泊施設「キュレーションホテル桃山雅苑」は2021年3月に開業しました。「伝統建築とアートを滞在しながら体感する新しいコンセプトの宿泊施設」をうたい、元々は企業の保養所だった建物をリノベーションし、館内には伝統工芸品や現代アート作品を並べています。

 「キュレーション」と名前が付くように、客室のデザインや展示する作品は「キュレーター」が監修。革新的なデザインを施すことで、建物や作品に新たな価値を生み出すことを大切にしています。実際に「キュレーションホテル桃山雅苑」は、築40年を超える無機質な元保養所の建物に「目利きが集めた作品」を加えることで、「泊まる美術館」と評されるアーティスティックな宿泊施設へと生まれ変わっています。

 「キュレーションホテル桃山雅苑」を手がけたのは、日本とイギリスを拠点に活動してきたインテリアデザイナー・澤山乃莉子さん。澤山さんは2017(平成29)年、熱海に移住。熱海に残る素晴らしい日本建築に価値を与えて残そうと活動を始め、現在、熱海市内には築80年を超える元旅館や古民家を生かして「キュレーションホテル」として蘇った宿泊施設が3棟を数えます。

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館内の目に飛び込んでくる全てが「アート」

 「キュレーションホテル桃山雅苑」がある場所は、別荘地として栄えた桃山地区の閑静な高台にあり、建物から相模灘を望むことができます。すぐ近くには「MOA美術館」。熱海駅からも徒歩約10分の場所にあります。

 1階エントランスを入ると、印象的な現代アート作品が飾られたロビーがあり、さらに先に進むと大空間のリビングダイニングが現れます。リビングには、幕末期に国外に流出した作品を買い戻したという「琳派」を印象付ける黄金の富士山の屏風(びょうぶ)絵が飾られています。

現代アート作品を展示したロビー

壁に飾った黄金の屏風絵が目に飛び込む

 さらに奥のダイニングエリアには、間伐材で作られた大型の書棚があり、アートやデザインを中心としたビンテージ書籍が並ぶライブラリースペースとなっています。ダイニングテーブルとグランドピアノを配したこのエリアは、海を望むデッキに面し、開放的な空間を演出しています。

 客室は2階・3階に4部屋あり、3人の国際的デザイナーが、それぞれ違ったテーマでデザインしたのもキュレーションホテルの特徴の一つ。部屋の広さは1部屋当たり約60平方メートル。アート作品に彩られた空間となっています。

客室ごとに違ったデザインとコンセプトに

アート作品を施した客室は約60平方メートルの贅沢な空間

 建物全体の広さは約600平方メートル。定員は8人。リビングダイニング、キッチン、客室のほか、温泉付きの浴室が2つ、会議室、書斎を備えます。客室の一つは、茶室としても使うことができます。

茶室としても使うことができる客室も

「キュレーションホテル桃山雅苑」でのワーケーション利用の魅力

 今回、「キュレーションホテル桃山雅苑」をワーケーションで利用する宿泊客2組にインタビューしました。1組目は、デザインやイラスト作品を手がけるアーティスト・鶴田勇磨さんとアーティストのアシスタントや映像制作を手がける斎藤英理さん。東京と熱海との二拠点生活をする鶴田さんと川崎市を拠点に活動する斎藤さんは、1月から始まる鶴田さんの個展の打ち合わせで同施設を利用しました。

デッキに面したダイニングテーブルで打ち合わせをする鶴田さんと斎藤さん

 打ち合わせ場所として同施設を選んだ理由について、鶴田さんは「施設の周辺は静かで自然に囲まれています。街なかだといつでもホテルを抜け出して飲みに行けるという誘惑がありますが、ここにはありません」と話します。「実際に使ってみると、館内には書籍やアート作品が至る所にあり、インスピレーションが湧くようなしつらえです。まさに『泊まる美術館』だと思います」と鶴田さん。斎藤さんは「打ち合わせは集中でき、休憩中は作品を眺めたり、デッキから海を眺めたりと、すてきな環境で過ごすことができます」と話します。

アートに囲まれた空間で個展の打ち合わせをする2人

 同施設から坂を上ると、高台には「MOA美術館」があり、身近にアートに触れられる環境にも恵まれています。昔から文豪や芸術家が別荘を構えていた保養地の一つが「キュレーションホテル桃山雅苑」のある桃山地区です。現代のアーティストの創作活動やワーケーションの拠点として、同施設が活用されていました。

相模灘と初島を望む客室で仕事に集中することもできる

 2組目は、都内にあるエグゼクティブ層向けの転職エージェント会社で働くクラーク・タイさんとザック・マンスェティさんです。普段はほぼテレワークで働いているという2人は、顔を合わせた会議と家族を連れての旅行を兼ねたワーケーションで「キュレーションホテル桃山雅苑」を利用しました。

リビングで仲間と打ち合わせをするクラークさんとザックさん(中央2人)

 熱海には旅行やワーケーションで年間20日以上は訪れているというクラークさん。都内からのアクセス性の良さ、リラックスして仕事ができる自然環境を気に入っているそうです。実際に同施設を使った感想として、クラークさんは「仕事は個人情報などプライベートの話も含まれるため、個室の会議室があることが良かった」と話します。「館内は広くて天井も高く、開放的でラグジュアリー。すてきなアート作品は、休憩中に癒しを与えてくれます。一般的なホテルと違い、貸し切りで使えるのも良い点です」とザックさん。

自然に囲まれたデッキで休憩

 クラークさんは、熱海での仕事に疲れた時には、伊豆山神社にハイキングに行ったり、初島まで船で渡って食事をしたりと、都内では味わえない体験を楽しんでいるそうです。

 最後に、「キュレーションホテル桃山雅苑」の管理者・伊藤悠さんからのメッセージを紹介します。「館内にある多くのアート・デザイン、その全てにストーリーがあります。そのストーリーの内容を理解してもらうには、3泊以上は必要だと実感しています。その上で、休暇としての宿泊よりもインプットを行う宿泊を考察してきましたので、このワーケーションは私たちが考えていたコンセプトに最も適していると思います。ワーケーションで足を運んでもらったゲストがキュレーションホテルに興味を深め、さらには地域の文化にも興味を深めてもらえればと思います」。

猫、鳥、リスなどのお客様も…

 

「キュレーションホテル桃山雅苑」

住所 熱海市桃山町23-25

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