特集「熱海・スナックと私」では、市内の経営者にお薦めのスナックを紹介してもらいながら、これまでの人生やこれからの経営ビジョンなどを伺います。聞き手は、熱海経済新聞副編集長でボイストレーナー「たーなー先生」としても活動する田中直人です。
これまで、江戸時代から160年以上続く老舗干物店「釜鶴」5代目の二見一輝瑠(ひかる)さん、1806年創業の老舗温泉宿「古屋旅館」17代目の内田宗一郎さん、「宇田水産」社長の宇田勝さんに話を伺いました。今回は、熱海~初島航路の運営やホテル「熱海シーサイドスパ&リゾート」を経営する「富士急マリンリゾート」社長の堀内明広さんに初島でインタビューしました。3回に分けて、堀内さんのこれまでの取り組みや思いについてお伝えします。今回は中編をお届けします。
これまでの記事
――2軒目のテラスレストラン「ENAK(エナ)」について、魅力などを教えてください。
堀内 富士急グループが運営する「PICA初島 アジアンガーデン R-Asia」内にあるリゾートレストランです。海を望む開放的なロケーションで、シーフードバーベキューやタイ・シンガポールなどのアジアンフードを楽しめます。国産レモン発祥の地、熱海を紹介するためのレモンを使った食事やスイーツも人気です。
BBQを楽しめるENAK
――富士急マリンリゾートの社長になる前の経歴で印象的なエピソードを教えてください。
堀内 富士急ハイランド時代、営業部長として営業カレンダーを作成していた際、従業員の負担軽減やアトラクションのメンテナンス時間を確保するため、冬季に初めて2日間の連休を設定しました。すると、それまで宿泊していた来園者が減少し、周辺の宿泊施設から「なぜ連休にしたのか」と声が上がりました。この経験から、一つの企業の判断が地域経済に与える影響の大きさを実感しました。
コンサートなどの大型イベントを企画・運営した際には、1万5000人から2万人規模の来場者が河口湖エリアを訪れ、交通や宿泊、飲食など地域全体に大きな経済効果を生み出しました。こうした経験を通じて、観光施設は単独で成り立つものではなく、地域と共に発展していく存在であることを学びました。
その後は富士急ハイランドを離れ、公共交通事業であるバス会社へ異動しました。バス会社では初めて経営全般を担う立場となり、経営者としての視点を身に付けることができました。当時は、観光と公共交通を融合させたまちづくりが求められる時期で、沼津駅前の再開発や大型商業施設「ららぽーと沼津」の開業を見据えた地域交通の整備にも携わりました。就任後まもなくコロナ禍に直面し、厳しい経営判断を迫られる経験もしました。
テラスで海鮮BBQを楽しめる
――現職である富士急マリンリゾートの社長に就いた頃の話を聞かせてください。
堀内 赤字が続いていた初島航路の立て直しがスタートでした。着任当初は船のリニューアルと、借入金の返済という差し迫った課題を抱えていました。そこで、宣伝部時代の経験を生かし、新たな利用者を呼び込むため、初音ミクやピングーとのコラボレーション企画を展開しました。既存の利用者に加え、これまで初島を訪れる機会のなかった層の集客を図りました。
一方で、こうしたキャラクター企画は期間限定で継続性に課題があることも認識していました。そこで、地域に根差した長期的な魅力づくりが必要だと考え、地元の新聞などから地域の情報を集めながら、初島ならではの新たな取り組みを模索していきました。
ピングーコラボイベントの様子
――具体的にはどのようなことをしているのでしょうか?
堀内 地元高校生とのレモンプロジェクトです。プロジェクトのきっかけは、熱海高校の生徒たちが「熱海レモン発祥の地」をPRする活動を紹介した新聞記事でした。高校の担当教員と話をしたところ、「生徒たちに宣伝やマーケティングも学ばせたい」という話があり、私の経験を生かして協力することを決めました。
プロジェクトでは、国内のレモン産地を視察する中で、「レモンを見たり体験したりできる場所が少ない」と感じたことから、初島ではレモンをテーマにしたフォトスポットや体験型コンテンツを整備していくことを決めました。「レモンに触れられる場所」をつくることで、初島の魅力発信と、国産レモン発祥の地・熱海の普及を目指しています。
また、富士急行の企画・宣伝部門と熱海高校が連携し、オンライン会議を活用しながら商品開発やマーケティングを実践。生徒たちはターゲット設定から商品企画、プロモーションまでを学び、実際にメニューやフォトスポットのアイデアを提案するなど、プロジェクトの一員として参加しています。
園内のレモンフォトスポット
――船のリニューアル事業についても教えてください。
堀内 並行して進めていた船舶リニューアル事業では、新造船建設の高コスト化(5億円から12億円に上昇)と長期化(5年待ち)を受け、既存船のエンジン換装による改良を選択しました。
それが昨年夏に就航した新船「金波銀波」です。「金波銀波」は従来の大型渡航船(860人乗り)から、ラグジュアリーな船旅を提供する船へとコンセプトを変更し、顧客ヒアリングに基づいて各フロアに異なる機能を持たせた設計にしました。30分のプチ船旅を楽しんでもらえるデザインや機能にこだわりました。
「金波銀波」就航イベントの様子
新しい船は、乗船時間そのものを観光体験に変えることをコンセプトに開発しました。利用目的に合わせてフロアごとに役割を分ける一方、生活航路として利用する島民さんたちにも配慮し、地下フロアにはゆったり座れる座席やスマートフォンの充電設備を備えるなど、利便性を高めました。
デザイナーはこの船を「初島をそのまま切り取ってきた船」と表現し、「船に乗った瞬間から初島の旅が始まる」というコンセプトを掲げています。黒を基調とした外観も印象的で、利用者から高い評価を得ています。
――ここまで、ありがとうございました。では続きは次の店で伺いましょう。次回、後編では堀内さんの現在から未来の話を伺います。

堀内さんの話を伺った店「テラスレストランENAK」について
開業 2020年10月17日
営業時間 11時~16時(BBQは10時30分~)
住所 熱海市初島18
電話 0557-67-2151
テラスレストランENAKは、初島の「アジアンガーデン R-Asia」内にあるリゾートレストランです。店名はインドネシア語で「おいしい」を意味し、海を望む開放的なロケーションで、新鮮な魚介を使ったシーフードBBQやガパオライス、ナシゴレンなどの本格アジアン料理を楽しめます。
「アジアンガーデン R-Asia」は、芝生や亜熱帯植物が広がる南国リゾートのような空間で、潮風を感じながらゆったりと過ごせるのも魅力です。園内には熱海高校とのレモンプロジェクトから生まれたレモンをモチーフにしたフォトスポットも設けられており、初島ならではの景色とともに写真撮影を楽しめます。
南国リゾートのような「アジアンガーデン R-Asia」
「富士急マリンリゾート」過去の記事
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聞き手 田中直人