特集「熱海・スナックと私」では、市内の経営者にお薦めのスナックを紹介してもらいながら、これまでの人生やこれからの経営ビジョンなどを伺います。聞き手は、熱海経済新聞副編集長でボイストレーナー「たーなー先生」としても活動する田中直人です。
これまで、江戸時代から160年以上続く老舗干物店「釜鶴」5代目の二見一輝瑠(ひかる)さん、1806年創業の老舗温泉宿「古屋旅館」17代目の内田宗一郎さん、「宇田水産」社長の宇田勝さんに話を伺いました。今回は、熱海~初島航路の運営やホテル「熱海シーサイドスパ&リゾート」を経営する「富士急マリンリゾート」社長の堀内明広さんに初島でインタビューしました。3回に分けて、堀内さんのこれまでの取り組みや思いについてお伝えします。今回は後編をお届けします。
これまでの記事
――3軒目に選んだホテル「エクシブ初島クラブ」内にある「ラウンジ フィラーレ」について、魅力などを教えてください。
堀内 「エクシブ初島クラブ」は初島のリゾート気分を満喫できる会員制ホテルです。こちらのカフェラウンジをはじめ、一部レストランは宿泊客以外の利用も可能です。レモンを使ったスイーツやドリンクを楽しむこともできます。
ドリンクやスイーツを楽しめるフィラーレ
――富士急マリンリゾートでの今後の取り組みやプランを教えてください。
堀内 熱海高校の生徒さんと一緒に進めている「レモンプロジェクト」では、これまでレモンの門や黄色いポスト、伊豆山神社と連携した「初海神社」など、レモンにちなんだ映えスポットを作ってきました。
それだけではなく、昨年からアジアンガーデンの中の畑で本格的にレモンの苗木を植えていて、今年から少しずつ収穫できる予定です。収穫したレモンを使って、地元の地ビールメーカーさんと「初島レモンビール」を造ったり、静岡県内の飲料メーカーさんと「レモンスカッシュ」を作ったり、さまざまな商品につなげていきたいと思っています。その飲料メーカーの社長や従業員の皆さんにも実際に苗植えに来てもらっています。
将来的には、レモンの搾りかすを畑に戻すような循環型の仕組みも作りたいですし、レモン狩りも行いたいです。例えば往復乗船とレモン狩りをセットにして、取ったレモンをその場で搾ってスカッシュにしたり、ドレッシングにしたりと、ただレモンを見るだけじゃなくて、実際に触って、収穫して、食べてもらえるような体験にしていけたら面白いと思っています。
熱海高校生のレモンの苗植え
――レモンに実際に触れられて体験できる取り組みということですね。
堀内 初島では、私たち富士急が苗木を寄付して、島の皆さんにもレモンの苗木を育ててもらっています。エクシブさんでも、ホテルの会員さま向けにオーナー制のレモン苗木の取り組みを始めています。
そもそも初島でレモン栽培が盛んだったわけではありません。ただ、島の方が自家用で育てていたレモンを見たら、ちゃんと実がなって収穫できていた。それを見て、「初島でもレモン栽培がしっかりできるのではないか」というところから、このプロジェクトが始まっています。
あと、スタッフ用にレモンのTシャツを作ったところ、それを見た観光客から「これ、欲しい」とすごく言われました。急きょ商品化したら、これが結構売れています。こういうところからも、レモンが初島の新しい魅力になってきていると思います。
そもそも熱海は「レモン伝来の地」とも言われていて、熱海市としてもその歴史を発信しています。そういう熱海全体の取り組みともつなげながら、初島でもレモンを一つの新しい魅力として育てていければと思っています。
フィラーレで提供しているレモンのスイーツ
――富士急グループとしての今後の熱海での取り組みを教えてください。
堀内 富士急グループでは最近、十国峠や箱根遊船もグループに加わって、一緒に関われるようになりました。もともと富士急には「富士を世界に拓(ひら)く」という創業理念がありますので、富士山周辺から箱根、十国峠、熱海、初島までを、それぞれの観光地として「点」で売るのではなく、「面」でつなげていきたいと考えています。
河口湖や箱根と比較して、熱海はインバウンドのお客さまをそこまで誘客できていません。「熱海に行こう」という目的地としての認知が、まだ少し弱いと思います。
そこで、熱海のホテルを観光のハブにして、熱海に泊まってもらいながら、箱根や十国峠、初島などを何日かかけて周遊してもらうような形を作っていきたいと思っています。地域の交通機関とも、乗り放題の切符などで連携を進める計画を立てています。
伊豆山神社から箱根神社までを含めて、龍の伝説でつながるパワースポットのルートや、十国峠、初島を生かしたネイチャーツアーを作るのも面白いと思っています。そういうストーリーをつなげていくことで、熱海を起点に広域で楽しんでもらえる観光を作っていきたいです。
今後の取り組みを話す堀内さん
――熱海港についてはいかがでしょうか。
堀内 熱海港の今の旅客ターミナルは、もともと富士急と東海汽船が建設して県に寄贈したものですが、かなり老朽化しています。私たちは「船に乗るところからリゾート」というコンセプトでやっているので、今のターミナルの状態は、やはり少し違うと思っています。
せっかく熱海に来て、初島や大島に向かう玄関口なので、もっとリゾートらしい場所にしていきたいです。熱海市や地元の皆さんと共に、熱海港自体に人が集まって楽しめる場所になればと思っています。もちろん、再開発となると富士急だけではできませんので、国や県、地元の皆さんと一緒に考えていく必要があります。それと同時に、防潮堤や津波避難タワーなどの防災面も含めて考えていかなければいけないと思っています。
市街地を望む熱海港
――最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
堀内 リブランディングや再生事業は、いろいろ苦労も多いですが、その分、チームのみんなと一緒に喜べるのが、すごく楽しい仕事だと思っています。
私は「苦労は買ってでもしろ」という考え方を持っていて、苦労した分だけ、達成した時の喜びも大きいと思っています。それを一人で味わうより、チームのみんなで共感できると、喜びは倍以上になる。これからもそういう仕事ができたら思っています。
――ここまで、ありがとうございました。

堀内さんの話を伺った店「ラウンジ フィラーレ」について
営業時間 8時~
住所 熱海市初島800 エクシブ初島クラブ内
電話 0557-67-3000(ホテル代表)
グランドエクシブ初島クラブにある「ラウンジ フィラーレ」は、大きな窓から相模灘を望む、開放感のあるラウンジです。コーヒーなどのドリンクやケーキを楽しめるほか、初島全体で進める初島レモンプロジェクトに合わせ、「レモンパフェ」や「サンサンレモンタルト」も提供しています。海を眺めながら、ゆったりと過ごせる空間です。
相模灘を望む「ラウンジ フィラーレ」
「富士急マリンリゾート」過去の記事
熱海・初島にレモン150本植樹 熱海高生と観光振興プロジェクト
熱海の離島・初島で「初島漁師の海鮮丼」 17店が自慢の一杯を提供
熱海港と初島を結ぶ高速船「金波銀波」が就航 小島よしおさんが船長に
聞き手 田中直人