特集

【熱海 for BIZ Vol.3】 熱海のビジネス利用、受け入れプレーヤーの最前線(後編)

熱海だからできる「成果創出型オフサイト」とは

ワーケーションや企業オフサイトという言葉が広がって久しくなりました。しかし近年、企業が求めているのは単に「会議ができる場所」ではなくなっています。

組織の課題を解決したい。新しい発想を生み出したい。社員同士の対話を深めたい。地域や社会との接点を通じて視野を広げたい。そうしたニーズに応えるためには、会議室や宿泊施設だけでは十分ではありません。企業の目的を理解し、その実現に向けた体験や学びを設計する「受け入れプレーヤー」の存在が欠かせません。

熱海では近年、企業研修やチームビルディング、地域課題解決型プログラム、農業体験、ウェルネスプログラムなど、多様な受け入れコンテンツが生まれています。

第3回となる今回は、前回に引き続き、熱海で企業の学びや変化を支えるプレーヤーたちに焦点を当てます。

これまでの記事

【熱海 for BIZ vol.1】観光地・熱海におけるビジネス利用の現在地

【熱海 for BIZ Vol.2】 熱海のビジネス利用、受け入れプレーヤーの最前線(前編)

農業を通じて組織と向き合う「たからのはたけ」のファームケーション

熱海で生まれているプログラムの中でも特にユニークなのが「Farmcation(ファームケーション)」です。

その代表例が、「たからのはたけ」の取り組みです。ファームケーションとは、農業体験とワーケーションを掛け合わせた取り組みです。畑に入り、土に触れ、自然の循環を体感します。

普段デスクワーク中心のビジネスパーソンにとって、農作業は単なる体験ではありません。自然と向き合う時間の中で、自分自身や組織について考える機会にもなります。

近年、企業のオフサイトでは「何を学ぶか」だけでなく、「どう感じるか」が重視されるようになっています。

農業体験は、チームワークやコミュニケーション、ウェルビーイングの向上にもつながるといわれています。熱海が今後強化しようとしている「リトリート」「ウェルネス」という文脈とも親和性が高い取り組みです。

観光地だからこそできる自然体験と、企業活動に必要な内省や対話。その両方を兼ね備えたプログラムとして注目されています。「たからのはたけ」を運営する説田有佳さんに話を伺いました。

たからのはたけの説田さん

-たからのはたけでは、どのような取り組みを行っていますか。

説田:当園では、「たからのはたけ里山再生循環プロジェクト」を掲げ、里山環境の保全や農業を「農育」「食育」「木育」という視点から体験できるワ-クショップを提供しています。

農業体験も、収穫だけではなく、里山全体の環境の中で「農」を学び、自然とのつながりを理解してもらうことを大切にしています。木育の一環として、ツリ-クライミングやチェ-ンソ-体験、まきづくりなども実施し、その技術がどのような目的で活用されているのかまで学べる内容になっています。

こうした体験を生かし、企業向けにはチ-ムビルディングや自己探求、コンフォ-トゾ-ンから一歩踏み出すことを目的とした研修プログラムも提供しています。企業ごとの目的に合わせて内容を組み立てられるのが特徴です。

農園での体験プログラムの様子

-現在整備を進めている施設について教えてください。

説田:現在、2棟のミカン小屋を改修し、新たなファ-ムケ-ション拠点の整備を進めています。

1つ目は、海と梅園を眺めるカウンタ-席を備えたコワ-キングスペ-スで、仕事はもちろん、作品展示や小規模な演奏会、ワ-クショップなど、多目的に利用できる施設となります。併設してスカイデッキも整備中です。お茶や食事を楽しめるほか、ヨガや体操、屋外ワ-クショップなど、自然を感じながら過ごせる場として活用する予定です。

整備中のコワーキングスペース

2つ目は休憩室で、昔ながらの小屋の雰囲気を生かし、海を眺められる窓や小上がりを設けています。荷物置き場や更衣室、休憩スペ-スとして利用できるほか、利用者がゆっくりと過ごせる空間になります。

施設は年内の完成を予定しています。完成後はファ-ムケ-ション事業として、本格的に企業向けプログラムを展開していきます。施設の貸し出しに加え、里山体験や企業研修を組み合わせたプログラムを積極的に提案し、熱海ならではの新しいビジネス利用の場として育てていきたいと考えています。

農園を拠点にしたファームケーション

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福利厚生から組織戦略へ 「PerkUP」が描く新しい企業滞在

ワ-ケ-ションやオフサイトのニ-ズが高まる中、企業と地域をつなぐ新たなプラットフォ-ムとして注目されているのが、「PerkUP」が運営する「コワ-ケ-ション.com」です。

同サイトは、全国各地のワ-ケ-ション施設やオフサイトミ-ティング会場、チ-ムビルディングプログラムなどを紹介する情報サイトで、企業が目的に応じた滞在先やプログラムを探せるサ-ビスとして展開しています。単に施設を紹介するだけでなく、「どのような成果を目指すのか」という企業の目的に合わせて、地域資源や体験プログラムを組み合わせた滞在を提案しているのが特徴です。

同社では、企業の福利厚生やエンゲ-ジメント向上を支援してきた知見を生かし、ワ-ケ-ションやオフサイトを人材育成や組織開発の手段として提案しています。従来は福利厚生の一環として捉えられることが多かったワ-ケ-ションも、現在では経営課題の解決やチ-ムビルディングにつながる取り組みとして注目されています。

同社が熱海との連携を深めるきっかけとなったのは、自社のオフサイトミ-ティングでした。昨年、会社合併を控えたタイミングで、全国の事業開発メンバ-が熱海に集まり、1泊2日の合宿を実施。海や温泉に囲まれた環境の中で徹底した議論を重ねたことで、リアルに集うことの価値や、熱海という地域が持つポテンシャルを改めて実感したといいます。この経験を機に、「熱海の魅力をもっと多くの企業に伝えたい」という思いから、熱海市へのビジネス利用促進にも協力するようになりました。

現在、「コワ-ケ-ション.com」では熱海特集を公開し、企業研修やチ-ムビルディング、ウェルネス、ア-ト体験など、熱海ならではの多彩なプログラムを紹介しています。地域の魅力を発信するだけでなく、施設や地域プレ-ヤ-と企業をつなぐ役割も担っており、熱海で成果を生み出すオフサイトの実現を後押ししています。

今回、同社社長の斉藤晴久さんに話を伺いました。

-熱海でオフサイトやワ-ケ-ションを行う魅力を教えてください。

斉藤:弊社では日々、企業からチ-ムビルディングやオフサイトミ-ティングの相談を頂いています。その中で多いのが、「都内から90分以内で行けること」や「自然が豊かな環境であること」という要望です。

熱海の最大の魅力は、都心から最短29分というアクセスの良さと、海や温泉がもたらす非日常感を兼ね備えていることです。

現地に着いた瞬間、海が広がる開放的な景色が迎えてくれます。日常から少し距離を置くことで、オフィスでは生まれにくい自由な発想や本音の対話が自然と生まれます。宿泊を伴うことで時間を気にせず語り合えたり、地域資源を生かしたアクティビティーを取り入れたりできることも、チ-ムの一体感を高める大きな魅力だと感じています。

-実際に熱海でオフサイトを開いてみて、どのような成果がありましたか。

斉藤:昨年、会社合併を控えたタイミングで、全国にいるPerkUPの事業開発メンバ-と、合併先となるAnyWhereのメンバ-が集まり、1泊2日のオフサイトミ-ティングを熱海で開催しました。初日は、4社それぞれの歩みや事業計画、コアバリュ-を共有し、今後の事業戦略について議論しました。2日目は、自身を振り返るワ-クやOKRの設定、地域施設の見学などを行いました。

普段はリモ-トワ-クが中心だからこそ、「リアルで集まること」の価値を改めて実感しました。時間をかけて徹底的に議論し、互いを深く理解することで、「何をやるか」以上に「誰とやるか」が大切だということを再認識できました。会社としても、「ここから新しいスタ-トが切れる」という大きな手応えを得られた合宿になりました。

-「コワ-ケ-ション.com」を通じて、どのような価値を提供していきたいと考えていますか。

斉藤:私たちは「人と地域の豊かな出会いを科学する」というビジョンを掲げています。その中で、「コワ-ケ-ション.com」は、企業やチ-ムが集い、新しい関係性を築くきっかけをつくる入り口の役割を担っています。私たちが提供したいのは、単なる宿泊施設や会議室の紹介ではありません。チ-ムの目的に合わせて、施設やアクティビティ-を組み合わせ、成果につながる滞在を提案することです。

例えば、MOA美術館での対話型ワ-クショップやヨガなどのウェルネス体験を組み合わせることで、チ-ムビルディングや新しい発想を生み出す場を設計することができます。

企業がオフィスを離れ、心身をリフレッシュしながら次の一歩を踏み出すための「特別な時間」を創出することが、私たちの目指す価値です。さまざまな魅力を持つ熱海と連携し、その可能性を発信できることを大変うれしく思っています。

熱海ビジネス利用の強みは「設計力」

今回取材したプレ-ヤ-に共通しているのは、単なる施設提供ではなく、「成果が生まれる場」を設計している点です。

会議室や宿泊施設は全国どこにでもあります。しかし、地域課題と向き合う越境学習、廃校を活用した地域交流、農業体験を通じた内省、ウェルビ-イングを意識した滞在設計など、多様なプログラムを組み合わせられる地域は決して多くありません。

熱海では行政や観光局だけではなく、こうした専門性を持つプレ-ヤ-が増え始めています。それこそが、熱海が目指す「成果創出型オフサイト」の最大の強みなのかもしれません。

関連サイト

熱海 for BIZ

コワーケーション.com(熱海特集)

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